鍼灸の施術について

鍼灸とは

鍼灸は「しんきゅう」と読み、いわゆる「はり」と「お灸」のことを指します。
言葉自体は聞いたことがあっても「実際鍼灸治療ってどんなことをするのだろう」と疑問に思われる方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

自己治癒力を利用した鍼灸治療

例えば転んでひざを擦りむいたとします。
そうすると擦りむいたところから血が出てきます。ですが、血はいつまでも流れ続けることはなくそのうち流れは止まり、固まってかさぶたができます。その出来たかさぶたも自然となくなり擦りむく前の状態へと修復していきます。
このことから分かるように、人は元々傷ついてしまった自分の身体を自分自身で治す力「自己治癒力」を持っているのです。

 

鍼灸は「はり」や「お灸」を使ってわざと目に見えない傷をつけます。傷ついた部分には傷を治そうとする力が働き、栄養となる血液がたくさん運ばれて来ます。そうして傷は徐々に治っていくのです。

 

血液の流れが悪くなると、色々な組織に十分な血液や栄養が行き渡りにくくなります。 そのうえ老廃物などの不要なものが流れにくく溜まってしまうことで正常な働きが出来にくくなってしまいます。
不良姿勢や運動不足などで血流が悪くなり、老廃物などが蓄積して、新しい血液や栄養がうまく運ばれず、筋肉が硬くなったり痛みが発生したりするケースがあります。

 

そういった血液の流れの悪い場所に鍼灸をすると、血液の流れがよくなり、老廃物などの不要なものが流れやすくなります。

予防にも期待ができる鍼灸治療

鍼灸は、何かが起こった後に対する「治療」はもちろんですが、何かが起こる前の「予防」としての効果も期待できます。
最近様々なメディアで「未病」という言葉を耳にすることがあるかと思いますが、この言葉は東洋医学の病理概念にもなっています。
未病とは、病気ではないけれど病気に進行しつつある状態のことをいいます。つまり健康ではない状態のことです。

未病には、①自覚的な症状があるが検査などに異常が出ない場合、②自覚的な症状はないが検査などに異常が出た場合の2種類があります。

①自覚的な症状があるが検査などに異常が出ない場合

最近体がだるい、疲れやすい、体が冷える、などなんとなく調子が悪いといった症状はありませんか?
こういった不調を感じるようになったら健康とはいえません。胃腸の調子が優れなかったり、めまいや不眠なども未病の症状です。
医者に行くまでではないが頭痛や肩こりがあるといった場合も未病になります。健康な身体に疲労やストレスが加わると未病になりやすくなってしまいます。

そしてそれを「ちょっと調子が悪いだけだ」と甘く見ていてはいけません。未病は病気ではないけれど病気に進行しつつある状態なのですから放っておけば病気になってしまう恐れがあるのです。

 

未病の症状は人によって様々ですし病気への進行度も違ってきます。 身体の不調を整えるためには、その人の体質や体調に合わせて乱れたものを元に戻してあげる治療をしなければいけません。
私たちの身体には「自己治癒力」が備わっていますが、これは乱れたバランスを整える作用も持っています。
鍼灸はこの自己治癒力を高め、乱れたバランスを正常化する働きがあります。バランスを整えてあげることにより未病だった状態が健康な状態に近づいていきますので結果的に病気にならないための「予防」ということになります。

②自覚的な症状はないが検査などに異常が出た場合

今まで何の不調を感じていなかったとしても、健康診断などの検査をして異常が出て初めて不調に気づくケースもあります。自覚していないのに不調が検査結果として出てしまった場合、放っておくと自分では自覚しないうちに病気が進行してしまうかもしれないので大変危険です。
どちらも未病だと気づいたら早めにケアをしてあげることが大切です。 自分の身体を大事にして健康に元気な生活を送っていきましょう。

WHO(世界保健機構)による鍼灸適応症

日本ではまだ認められていない鍼灸ですが、鍼灸による治療効果が国際的にだんだんと認められるようになりました。
ここではWHOが鍼灸治療で効果があるとすでに認定されているものを参考までに紹介します。

分類 疾患名
運動器系疾患 関節炎、リウマチ、頚肩腕症候群、五十肩、腱鞘炎、腰痛、外傷の後遺症(骨折、打撲、むちうち、捻挫)
神経系疾患 神経痛、神経麻痺、痙攣、脳卒中後遺症、自律神経失調症、頭痛、めまい、不眠、神経症、ノイローゼ、ヒステリー
消化器系疾患 胃腸病(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘)、胆嚢炎、 肝機能障害、肝炎、胃十二指腸潰瘍、痔疾
呼吸器系疾患 気管支炎、喘息、風邪および予防
循環器系疾患 心臓神経症、動脈硬化症、高血圧低血圧症、動機、息切れ
代謝内分泌系疾患 バセドウ氏病、糖尿病、痛風、脚気、貧血生殖、泌尿器系疾患、膀胱炎、尿道炎、性機能障害、尿閉、腎炎、前立腺肥大、陰嚢
婦人科疾患 更年期障害、乳腺炎、白帯下、生理痛、月経不順、冷え性、血の道、 不妊
小児科疾患 小児神経症(夜泣き、かんむし、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠)、小児喘息、アレルギー性湿疹、耳下腺炎、夜尿症、虚弱体質の改善
眼科疾患 眼精疲労、仮性近視、粘膜炎、疲れ目、かすみ目、ものもらい
耳鼻咽喉科疾患 中耳炎、耳鳴り、難聴、メニエル氏病、鼻出血、鼻炎、蓄膿(ちくのう)、咽喉頭炎、扁桃炎(へんとう炎)

NIH(米国 国立衛生研究所)による鍼灸適応症

【神経系疾患】
◎神経痛・神経麻痺・痙攣・脳卒中後遺症・自律神経失調症・頭痛・めまい・不眠・神経症・ノイローゼ・ヒステリー
【運動器系疾患】
関節炎・◎リウマチ・◎頚肩腕症候群・◎頚椎捻挫後遺症・◎五十肩・腱鞘炎・◎腰痛・外傷の後遺症(骨折、打撲、むちうち、捻挫)
【循環器系疾患】
心臓神経症・動脈硬化症・高血圧低血圧症・動悸・息切れ
【呼吸器系疾患】
気管支炎・喘息・風邪および予防
【消化器系疾患】
胃腸病(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘)・胆嚢炎・肝機能障害・肝炎・胃十二指腸潰瘍・痔疾
【代謝内分秘系疾患】
バセドウ氏病・糖尿病・痛風・脚気・貧血
【生殖、泌尿器系疾患】
膀胱炎・尿道炎・性機能障害・尿閉・腎炎・前立腺肥大・陰萎
【婦人科系疾患】
更年期障害・乳腺炎・白帯下・生理痛・月経不順・冷え性・血の道・不妊
【耳鼻咽喉科系疾患】
中耳炎・耳鳴・難聴・メニエル氏病・鼻出血・鼻炎・ちくのう・咽喉頭炎・へんとう炎
【眼科系疾患】
眼精疲労・仮性近視・結膜炎・疲れ目・かすみ目・ものもらい
【小児科疾患】
小児神経症(夜泣き、かんむし、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠)・小児喘息・アレルギー性湿疹・耳下腺炎・夜尿症・虚弱体質の改善

※上記疾患のうち「◎神経痛・◎リウマチ・◎頚肩腕症候群・◎頚椎捻挫後遺症・◎五十肩・◎腰痛」は、わが国においては、鍼灸の健康保険の適用が認められています。